第3弾に陰謀論を選んだ理由
第3弾に陰謀論を選んだ理由
Section titled “第3弾に陰謀論を選んだ理由”第2弾のAgent-Based-Theory-Testing-2-Sigma-Problemでは、自分の仕事の中でも大きな位置を占める教育を扱いました。
研究を終えたあと、次も同じくらい真剣になれるテーマを選べるだろうか、と考えました。教育にはまだ調べたいことがあります。ただ、第3弾も教育にすると、同じ場所を続けて掘ることになります。少し違う方向へ進みたい気持ちがありました。
身近に感じる問題を研究してみる
Section titled “身近に感じる問題を研究してみる”そこで、日常の近くにあり、自分が実際に課題だと感じている問題を研究対象にしてみようと考えました。選んだのが陰謀論です。
陰謀論は、遠い社会現象として関心を持ったテーマではありません。身近な経験から、放置できない問題だと感じていました。研究へ真剣に向き合うための動機として、この距離の近さは大きかったと思います。
ただし、その具体的な経験は公開しません。複数の事例がありますが、内容を書けば自分だけでなく、対象となる人のプライバシーへ触れる可能性があります。この日誌に残すのは「身近な経験がテーマ選定に影響した」という範囲までです。
「きれいな研究」へ泥臭さを持ち込めるか
Section titled “「きれいな研究」へ泥臭さを持ち込めるか”研究を外から見ていると、変数を切り分け、再現できる形へ整えた「きれいな研究」が多いように見えます。それは研究として必要な作業です。一方で、現実の問題には、感情、関係性、曖昧さ、利害が混ざり、簡単には整理できない部分があります。
自分はスタートアップや中小企業に近い環境で、整っていない問題を扱う泥臭さを経験してきました。限られた情報と資源の中で、問題を完全に分解できないまま手を動かす。その経験を研究へ持ち込めるのではないかと考えました。
陰謀論の伝搬も、情報の正誤だけでは捉えきれません。誰から聞いたか、どの関係の中で信じたか、孤独や所属がどう関わるか。まだ仮説の段階ですが、こうした絡まりを消さずに扱うことが、この研究で試したい「泥臭さ」です。
AIの論理に押し切られないテーマを選ぶ
Section titled “AIの論理に押し切られないテーマを選ぶ”もう一つ、AIと研究を進める中で感じていたことがあります。AIは仮説に対して、さまざまな角度から整った反論を返します。それ自体は研究を進める助けになります。
ただ、自分に実体験のないテーマでは、その反論に対する次の仮説が出てこないことが多くありました。「論理としては整っているが、現実はそうではない」と感じても、どこが違うのかを具体的に言えず、そのまま論理に押し切られるような感覚があります。
実体験のあるテーマなら、反論を感覚だけで退けるのではなく、「この条件が抜けている」「現場では別の力が働く」と食い下がれます。その違和感を、次に検証する仮説へ変えることもできます。
実体験は、それだけで主張を証明する根拠にはなりません。しかし、AIのもっともらしい説明に対して反論を組み立て、現実とのずれを探すための材料にはなります。だから今後は、自分が真剣に異議を唱えられるだけの動機と経験があるテーマを選ぶべきだと思いました。陰謀論は、その条件に当てはまる題材でした。
教育研究から引き継いだもの
Section titled “教育研究から引き継いだもの”テーマは教育から陰謀論へ変わりましたが、研究方法にはつながりがあります。
第2弾では、LLMエージェントを人間の学習者に見立てて社会科学の理論を検証しました。その過程で、AIエージェントと人の違い、実験境界の置き方、測定上の交絡へ何度も直面しました。
第3弾でも、AIエージェントを人に見立てた実験を使います。ただし今回は、教育条件による学習成果よりも、家族や近い関係の中で信念がどう伝わるかを扱います。
前回の方法をそのまま横展開するのではありません。陰謀論という題材へ移したことで、慎重すぎて信念を採用しない聞き手、モデル系列ごとの挙動差、孤独をAIエージェントでどう扱うかといった、別の難しさが出てきました。
この動機を公開する理由
Section titled “この動機を公開する理由”研究日誌には、実験条件や結果だけでなく、なぜその問いを選んだかも残しておきたいと思います。
テーマ設定には、研究上の重要性だけでなく、研究者自身の経験と関心が入ります。今回の出発点は、陰謀論を身近な課題だと感じていたことと、整っていない現実を扱ってきた経験でした。
その動機を隠す必要はありません。しかし、動機の説明を理由に他者の事情まで公開する必要もありません。研究の由来は残し、個別事例は残さない。この線を、このプロジェクトの公開境界にします。
現時点での問い
Section titled “現時点での問い”- 身近な関係の中で、陰謀論はどのように伝搬するのか
- 情報源の強さだけでは説明できない採用を、関係性から捉えられるか
- 孤独と陰謀論のあいだにフィードバックループはあるか
- LLMエージェントでこの問題を扱うとき、人との違いはどこに現れるか
- AIの反論と実体験のずれを、検証可能な仮説へ変えられるか
- 現実の泥臭さを残しながら、検証可能な実験境界をどこに置くか
これらは研究を始めた時点と現在の問いが混ざっています。プロジェクトは進行中であり、今後の実験と査読で変わる可能性があります。
- 身近な具体的事例は記載しない
- 関係者を推測できる属性、関係、発言、時期を書かない
- 未公開の論文、データ、結果は、公開範囲を決めてから記録する
- 個人の経験を、陰謀論一般についての根拠として扱わない